強引上司のターゲット
結局課長に家まで送ってもらうことになったあたしは、課長のマンションの地下にあるツヤっつやなネイビーの車に乗った。



ドアなんて自分で開けられるのに、なんだかんだあたしを甘やかす。

シートベルトだって、やってもらわなくても出来る。

根っからのチャラ男だ。


「瑞花の家までは15分くらいで着くから。」


……。
えぇ。
もう、驚きませんとも。

瑞花と呼ばれることも、課長があたしの家を知ってることも。

どうせ何を聞こうが、“上司だから”とでも言うんだ。




家までの15分は、なんだかとっても長いようで短かった。

ハンドルを握るあの手が、あたしの髪を撫でたこと。
頭を撫でたこと。

あんなに細くて白い指も、ギュッと抱きしめられると流石に男性だったこと。


たった二日の間で色んなことがあった。


課長といると、前から知ってるみたいに安心するんだ。




「ほら、着いたよ?」


気付けば、家の下でハザードランプを付けた課長が首を傾げている。


「あっ!すいません!あの、ありがとうございました!」


慌ててシートベルトを外してドアに手を掛けると…突然、課長の指の背があたしの頬を撫でた。

あの日…エレベーターホールでもこんな風にされた。
優しく、優しく。


そしてそっと、頬にキスを落とした。
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