強引上司のターゲット
この十分で一日分疲れた気がしながら椅子に座ると、新庄さんに声をかけられた。

あたしの担当する新庄さんは、一つ年上の男性で、身に付けるものはいつもピシッとしてて清潔感があるし、仕事もバリバリこなす。プライドが高そうに見えるけど、男らしい顔立ちが嫌味な感じを相殺している。
THE社会人!という感じ。


「寺谷さんコレ、宜しく。」


そう言って差し出された書類の束に、うっわ〜と思いながらも、「はいっ!」と作った笑顔で受け取った。
この抑揚の無い話し方も口数の少なさも、あたしは未だに緊張してしまう。

仕事ができる新庄さんの補佐はその分処理する書類も多いから、他の営業さんと比べて泣きたくなるときもあるけど、新庄さんの足を引っ張るわけにはいかないと、あたしも頑張っている。


「それから…」


うっ…まだ何かあるんですか…?






「今夜食事でもどう?」






「……え?なっ…えっ??」






あまりにも突然の言葉に、完全に固まってしまった。
< 5 / 111 >

この作品をシェア

pagetop