強引上司のターゲット
なんとなく…雰囲気が違う。
いつも通り形の整ったスーツが新庄さんの堅さを更に醸し出してるのに、何処と無く柔らかく感じるのはなんでだろう。

自分でも気付かないうちに観察し過ぎたらしく、「何?」と言ったその冷たくて怪訝な顔ですらいつもと違って見えてしまう!

な…なんだこれは?
花金マジックか?!


そんなあたしに構うことなく「こっち」と口数が少ない新庄さんに付いて行くと、目的地は地下のお店だった。


黒いドアには“Bar”なんて書いてある。
OL歴四年だっていうのに、Barなんて洒落た場所、数える程しか来たことない。


今までの彼氏も年上はいなかったし、こういうお店よりはラクなお店がいいとお願いしてたから。


少し気後れしつつ新庄さんに続いて入ると、意外にもかしこまった感じがなくて、客層もラフな格好の若い人が多かった。

良かった〜と思いながら目だけで周りを見渡していると、「気軽に入れる店だから」とあたしの心を見透かしたような言葉をかけてくる。


いつもは…会社では、ミスや不手際を怒られるんじゃないかって、まるで上司のような新庄さんにビクビクしてるけど、今の新庄さんは紳士的で男らしい。


ちゃんと、あたしのことを気遣ってくれるのが分かる。


なんだか、怖いなんて理由で拒否ってたの、良くなかったかも。
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