強引上司のターゲット
ふかふかのソファ椅子のテーブルに通されると、ギャルソンエプロンの似合うワイルドな店員さんが注文を取りに来る。


「よっ」「おお」のやり取りで、新庄さんと親しいのかなと思っていると、


「めっずらしい〜!随分可愛らしい子連れてんじゃん!?」


と店員さんがからかうように言うではないか。

こういう場所に慣れてないあたしは、こんな社交辞令にもなんて反応していいかわからずに俯いで赤くなるしかない。
あぁ情けない!
その思いがより一層顔を熱くする。


「お前もういいから適当に持って来て」


新庄さんが不機嫌に言えば「あ、ごめんね〜」とあたしにだけ笑顔で謝ってカウンターの奥へ行ってしまった。


「悪い。アイツ悪気はないんだ」


い、いえいえ!
「慣れてないのは、あたしですから!」


ブンブンと顔を振ると、新庄さんが笑う。
会社では絶対見せない笑顔で、柔らかく笑った…!


その貴重な笑顔につい見惚れてしまった。そして…


「可愛いなんて、言われ慣れてるだろ」


「え?」
可愛いなんて言われ慣れてるだろ?…?
って言った…?


「いや…なんでもない。」


確かに聞こえた言葉の意味が分からずに聞き返してしまったけど、新庄さんは何でもないと流した。
流してくれて良かった。
そんなこと言われたら、またキョドってしまうじゃない。
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