好きとスキが重なった日
バスが到着して、おばあちゃんと隣の席になった。

おばあちゃんが窓側で、私が内側。

バスにゆらゆら揺られながら、おばあちゃんと一緒におせんべいをポリポリ頬張る。

ここでおせんべいのかす落としたら、怒られるだろうなー・・・

お茶があったら最高なのに…!!

そんなことを思っている時、おばあちゃんが"昔からやっている編み物をやるかい?"と訊いてきたので、編み物を教えてもらうことにした。

今は指で編む物もあるから、時代の変わりがすごいなぁ~と感じる今日この頃。


「ここはもう少し丁寧に、こっちを持ち上げてこの中をくぐらせるのよ!」


「なるほど!すごく勉強になります」



編み物に集中していたら、時間をすっかり忘れ、気がつけば最寄りのバス停に着いてしまった。

バスの中で編み物をしていたからなのか、少しばかり酔ったようにも感じる。

何だかふらふらするなー。



*****


お金を支払いバスを降りると…
少し目眩を感じながらも、杖を突くおばあちゃんを支えて、無事○○総合病院に着くことが出来た。



「幸枝おばあちゃん、治療頑張って来てくださいっ!
幸枝おばあちゃんが元気になった姿を見るの、楽しみにしています!」


「ありがとう、美莉亜ちゃん
美莉亜ちゃんも頑張ってねぇ!」


「はい!」


○○総合病院の中に入った私達は、外来する場所が違うから、受付の近くで挨拶をして、その場で別れた。


幸枝おばあちゃんのコツコツと杖を突く音が、だんだん遠ざかっていく。






幸枝おばあちゃん!頑張れ!!



私は幸枝おばあちゃんの後ろ姿を眺めると、咄嗟にそう心の中で呟いた。
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