好きとスキが重なった日

灯の照らす向こう側

人工呼吸…

額を押さえている手の親指。
人差し指で悠真の鼻をつまむ。
自分の口で悠真を覆うように塞ぎ、一秒かけて悠真に息を吹き込む。

これを二回繰り返す。


次に胸骨圧迫(心臓マッサージ)…

胸の真ん中に手の付け根を置き、もう片方の手を重ね、両手を組む。

肘を伸ばし、垂直に圧迫(悠真の胸が4~5㎝沈む程度の強さ)
この時早いテンポで絶え間なく行う。


また圧迫と圧迫は、しっかり胸が戻るまで圧迫を緩めること。

これを30回続ける。



私は、学校で習った保健の知識や、たまたま目にしていたドクター番組の、人工呼吸や心臓マッサージのやり方を見よう見まねで真似た。


保健の成績が5で良かった。
その分、他の人より保健の知識が豊富だ!



この繰り返しをしばらくしていると、悠真が咳き込み息を吹き返した。

脈に触れれば、脈もしっかりと正常に動いている。


「げほっ、げほ」

私は声をかけながら、優しく悠真の背中を擦った。


「悠真、大丈夫?」


「あぁ、美莉亜のおかげで何とかな…

俺、今必死に生きようとしてるんだ
これ夢じゃないよな?

俺はさっき、自分の走馬灯を見ていた

六年前のまだ幼かった美莉亜と俺が出てきたんだ

俺、さっきまであんなバカなことを言ったけど…
今はものすごく生きたいって 死にたくないって思った」


「夢じゃない!ほら、私を見て」

私は悠真の手を掴むと、私の頬に優しく触れさせた。


「温かいんだなぁ
美莉亜って、こんなに温かかったんだ…」


「そうだよ!
生きていること自体が、ひだまりのように照らされているから、温かいんだよ?

それと、さっき悠真が言ったこと、私が全部帳消ししてあげる!!

だからもう、二度とあんな悲しいこと言わないで!
私がどれだけ心配したと思ってるの?

これからは嘘ついたり、隠し事なしだからね!

約束」


私はそう言って、自分の小指を悠真の小指に絡め、ゆびきりげんまんをした。


悠真と何かを約束するのは、今日で二回目。


改めて悠真と私だけの決め事ができた。


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