好きとスキが重なった日


あれからどれほど経ったのだろうか。
かれこれ、30分以上は経っている。

悠真が中々緊急処置室から出てこないし…。

ふとそう思った時、緊急処置室の扉が開いた。
中から医者やオペナースがちらほらと出てきた。

私はその人達の元へ、駆け足で向かう。


「悠真は…悠真は無事何ですか?
命に別状ないですよね?」

私がそう必死に言ったからか、医者やオペナースが微笑んだ。

オペナースは桜色のチークを光らせて。


「はははっ、彼なら大丈夫だよ
幸い、果物ナイフで刺された傷が思いの外浅くてね、それより彼は、本当に面白い人だ!

君、いい彼を持ったね!」


「良かったですね!彼氏さんすぐ出てきますよ」


「え…?どういうことですか?」


「まぁまぁ、それは彼に聞きなさい」


そう言った医者とオペナースは靴音を立て、私の元から歩き去って行った。


そのすぐ後に、ストレッチャーに乗った悠真が出てくる。


悠真は目をぱちくりさせ、ストレッチャーから体を起き上がらせた。


「美莉亜も一緒に乗るか~?
案外楽しいぞー!!ここから見る景色なんか、中々見れないだろ?な?」


「いい加減にしてよ!
何よ、そんなに楽しそうにはしゃいじゃって…
私がどれほど強く祈ってたか分かる?

悠真には私の気持ちなんか、どうせ分からないでしょうねー」


ストレッチャーに乗って、心を踊らせていた悠真が急に肩をくすめて、しゅんと落ち込んだ。


「ごめん…美莉亜が心配してると思ったから、元気になった姿を見せて、美莉亜を安心させたかったんだ

そう思った俺が間違いだった」


「私のこと、ちゃんと気にしてくれていたんだね!
ありがとう!」


「俺も人間なんだから、ちゃんと心があるんだよ?」


「そうだよね!」


私が業とらしく笑うと、悠真も真似して笑い始めた。

だからー私のモノマネするの止めてってばー!!


そんな私の心の声が、大量に漏れる。
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