好きとスキが重なった日
病院を出た私は、悠真の病室があると思われる窓を見上げる。

一瞬、そこに人影みたいに黒い影が見えた。

もしかして、悠真!?

私はハッと驚くと、息を潜めた。
額から流れ落ちる一滴の汗。

冬にも関わらず、手汗もひどい。


私は一体、何に怯えているの…?


あれは悠真なんだよね?
でも、遠くてはっきりと顔が見えなかった。


それにあの人、黒いスーツを着ている気がした。


ひょっとして、見上げる病室間違えたのかな。


でも私は、あの黒いスーツの人に見覚えがある。


そう、七つの噂徹底検証の時に…

三年G組にいた見知らぬ人。

その人は未来を予知出来るとか言ってたな~
それに、私達の未来を見たとか言ってたし。

私の手の平に握らせてくれた、告白イベントのチケット・・・


あれを私が使う日が来るのか?
使うといっても、クリスマスの日だけど。


私は前を向き、まっすぐ歩き出した。


街灯がオレンジ色の光を灯している。
私がどのくらい悠真の病室にいたのかを、まるで物語っているようだ。

今日はやけに寒い。
コートを着ているのに関わらず、首筋、そしてジャージの隙間からひんやりと冷たい風が流れる。

もう冬なんだ。

私はそう咄嗟に口に出すと、両手をさすって、足早に帰ることにした。




後ろから誰かが、私の後を付けていることに、気づくこともなく…。



私はただただ帰宅を急ぐ。

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