好きとスキが重なった日
家の中に入ると、キッチンでお母さんが夕飯の支度をしているのが見えた。
野菜を包丁で、トントンしながら切っている。

今日の夕飯は何だろう・・・

カレーかな?
そう思いながらも私はリビングを見渡す。
今日に限ってお姉ちゃんの姿がなかった。


「お母さん、ただいまー!
今日は珍しく早いね!」

キッチンにいるお母さんに向かって声をかける。
お母さんは料理を作るのに集中しているのか、私の方を見向きともしない。


「あら、美莉亜おかえりなさい!
今日は用事があって、早く上がらせてもらったのよ」


「お母さん、用事って何?」


「今日、働いている会社に学校から電話があって、悠真くんがお腹を刺されて怪我をしたって、連絡があったの

その場で美莉亜見てたんでしょ?
それが自殺なのか、殺害目的で刺されたのか、それとも事故なのか、それが分からなくて先生方が困憊(こんぱい)してた

悠真くんが″警察に連絡しないでくれ!″って言ってたらしいから、まだ警察沙汰にはなっていないけど、本当の所どうなの?」


さっきまでは料理に集中していたはずのお母さんが、動かしていた手を止めて、私の方を向いて話し出した。

藤木くんがいるのに気づいていない。

藤木くんはすごく驚いた顔をしていて、今にも腰を抜かす所だった。

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