好きとスキが重なった日

秘密の送別会

「悠真、何泣いてんの?」


「バーカ!泣いてなんかないしー」

でも悠真の目元には、キランと光っている涙の雫が見える。


「そんなに嬉しいんでちゅか?」

私は咄嗟に赤ちゃん言葉を、恥ずかしながらも使うと、悠真は照れながらも私の頬を両手で掴んでは、もてあそぶ。


「お前な、急に赤ちゃん言葉使うなよ!
恥ずかしいじゃん…

あぁ、分かったよ
正直に言えばいいんだな?
泣いて何が悪い」


悠真が途中まで言った瞬間…
藤木くんの声と覆い被さり、よく聞こえなかった。


確か…泣いてどうのこうのって、言ってたような。



「悠真、何泣いてんだよ?お子ちゃまか?」


そう笑いに誘った藤木くんが、後ろからふと現れ、悠真にハンカチを手渡した。

藤木くんは、もう既に黒のタキシード姿に変わっている。



「お前まで、美莉亜と同じこと言うのか?
美莉亜なんかさっき、赤ちゃん言葉使ってきたんだぜ!

でもありがとうな」


「へぇー、美莉亜ちゃんが、ねー」


悠真はハンカチで涙を拭うと、元の悠真の姿に戻った。
いつもの賑やかで、頼もしい悠真に戻ってる!

目を細め、皆に向かって、笑って誤魔化そうとしてるし…。



でも藤木くんの様子が何か変。


私が赤ちゃん言葉を使ったって、悠真が喋った時…



藤木くんは何かを企んだみたいに、ニャッと悪魔みたいに微笑んだ。


何だか嫌な胸騒ぎがする。


無事にこの難を逃れられたらいいけど。
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