不機嫌主任の溺愛宣言
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翌日、AM9時45分。デパ地下朝礼の時間。
既に不吉な暗雲は立ち込めていたが、何も知らない忠臣はいつものように朝礼を進める。
そして口火は、忠臣が来週に迫った物産展について話をした後に突如切られた。
「以上が物産展に於ける参加店舗への概要です。何か不明な事があれば私か副主任の方に――」
「はい!聞きたい事があります!」
忠臣の説明を遮るように、ひとりの従業員が挙手をした。その勢いに集まっていた従業員が皆注目する。
「なんでしょう?」
キチリと眼鏡のフレームを直しながら忠臣が尋ねれば、挙手をした女性従業員は彼を睨みつけるような表情で言った。
「どうして物産展ブースは【Puff&Puff】が正面の1番良いスペースをもらってるんですか?」
質問した従業員は【Puff&Puff】に次いで売り上げ2位を誇る人気菓子店の店長、鈴木だった。仕事に貪欲でいつも【Puff&Puff】をライバル視している。そんな彼女の質問に、忠臣は怪訝な表情を浮かべる。
「前回の物産展での売り上げ及び、日頃からの【Puff&Puff】の客数から考慮した配置です。何か問題でも?」
毅然とした答えに反論の余地は無い筈だった。けれど。
「本当にそれだけですか?前園主任は個人的事情で【Puff&Puff】を特別扱いしてるんじゃないですか?」
ありえない言葉を返されて、その場にいた忠臣、一華、右近の表情が一瞬で変わる。