不機嫌主任の溺愛宣言
(3)
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物産展まであと3日。会場の設置は問題なく進み、商品の手配から販促物の展開まで全ての準備が滞りなく行われていた。……筈だった。
「……なんだと?」
その日の終業後。地下食品街の数人の店舗リーダー、及び店長が事務所へとやってきていた。皆、どうにも悪い顔色を浮かべながら。
そして、彼らから受けた報告に忠臣と右近は耳を疑う。
「今、別の店舗にかけあって人員を探してるんですが……もしかしたら最悪な状況も有り得るかもしれません。すみません」
「うちもです。なんとか説得してるんですけど『家族が入院した』って言い張られたら、こちらも強く言えなくて」
申し訳無さそうにおずおずと口を開くリーダーらの報告内容はどれも皆同じだった。
従業員が物産展初日から数日間の休みを突然申し出てきたと云うのだ。しかも、店舗によっては3、4名同時に。ただでさえ忙しく人手の必要な時期。それを数日間も休まれてはとても店をまわせるどころではない。
各店舗、他の店舗や派遣会社に人員の補充を掛け合ってはいるが、なんせ日にちが迫っている。このままでは物産展開催中はブースはおろか、通常店舗も人員不足で酷い有様になるのは目に見えていた。
そして、それが数名の従業員によって計画的に行われていた事と、その理由が何であるかは、ここにいる全員が容易に想像が出来た。
忠臣はあまりに卑怯でくだらない攻撃に忌々しさを隠し切れず「ちっ」と大きく舌打ちをする。