不機嫌主任の溺愛宣言
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物産展に欠勤を届け出ていた者は、そのほとんどが休みを取り消した。中には元々乗り気でなかったが巻き込まれてしまった者もいたのだろう、直接忠臣や一華に謝罪に来る者もあった。
それでも反発を止めない者も幾人かは居たけれど、あれだけ堂々と一華への愛を見せ付けられた後では、妬む気持ちも馬鹿馬鹿しく萎れていくのは時間の問題に思えた。
そして――
「本日で物産展も最終日を迎えます。皆さんが頑張ってくれたおかげで現在のところ過去最高の平均売り上げを記しています。本日は更なる客足が予想されます、最後まで気を抜くことなく頑張りましょう」
「はい!!」
人員の不足も解消し、以前より士気の上がった万全の体制で臨んだ物産展は、前回より更に大幅な売り上げを更新した。その結果、忠臣は2期連続大きな利益をもたらしたとして、福見屋全店を対象とした地下食品部門の17年度優秀社員に表彰されたのであった。
ちなみにその功績に梓の推薦もあった事は、右近だけが知る秘密である。
「凄いですね、優秀社員賞だなんて。おめでとうございます」
とある休日の夜。忠臣は一華と約束した通り、ふたりで物産展の成功を祝ってレストランで食事をしていた。
ルビー色のワインをグラスで揺らしながら、一華が嬉しそうに顔を綻ばせ賞賛を贈る。それにカチンと自分のグラスを触れ合わせ、忠臣も幸せに目元を緩めた。
「頑張ってくれた皆のおかげだ。地下の従業員、右近、それに一華、君の【Puff&Puff】のブースの売り上げも素晴らしかった。感謝する、ありがとう」
直前までは絶望を味わうような苦労をしてきたからこそ尚更今回の成功が心に染みる。そして忠臣は改めて、デパ地下の仕事と云うものが如何に皆に支えられて成り立ってるのかを痛感した。けれど。