不機嫌主任の溺愛宣言
「そうですね。賑やかな場所よりはふたりで静かに過ごしたいかな。お部屋でディナーもロマンチックですね」
「なるほど、検討しよう」
一華のリクエストに忠臣はコクリと頷き、手元の肉のグリエにナイフを入れた。エシャロットソースの掛かった牛肉の風味を楽しんでいると
「あ、そう言えば」
ふいに、一華が呟いて持っていたフォークを置いた。
「私、来年の2月で今のアパートが契約が満期なんですよ。今の部屋気に入ってるから更新しようと思ってたんだけど……毎朝忠臣さんに送迎してもらうのも悪いし、もっと福見屋の近くに引っ越そうかと思って。派遣の契約が更新される限りは【Puff&Puff】で働き続けるつもりだし」
一華にしてみればたわいも無い相談のつもりだった。送迎の時間もふたりの楽しい時間だが、職場の近くに引っ越せば帰りに忠臣が立ち寄る事も容易になる。ただそれだけの相談のつもりだったのだが……
「…………そうか」
どこか瞳を輝かせながら返事をした忠臣の心には、一華へのクリスマスプレゼント計画が勢い良く発案されていた。
――かくして。
1ヶ月後、一華は忠臣の用意したクリスマスプレゼントに度肝を抜かれる事になる。
まるでジュエリーのようにラッピングされた部屋の鍵と共に伝えられたのは
「俺と一緒に暮らして欲しい」
プロポーズの如く情熱的な同棲の申し込み。そして貰った鍵で彼の部屋を訪れてみれば――
「や、やり過ぎです!忠臣さん!まだ一緒に暮らすって返事する前からこんなに揃えちゃって……もし私が暮らさないって言ったらどうするんですか!?」