不機嫌主任の溺愛宣言
【番外編】その男、助平
【番外編】
その男、助平
4月7日。それは、前園忠臣36回目の誕生日である。
生まれて初めて“恋人”と迎えるその日を、忠臣は特別な喜びと緊張を以て迎えようとしていた。
「忠臣さん、お誕生日何か欲しい物あります?」
誕生日の2週間前。朝食の席でそんな風に尋ねてくれた一華の気持ちさえも嬉しくてたまらない。
「君が選んでくれた物なら何でも嬉しいに決まってる」
そう答えたのは遠慮でもなんでもなく、忠臣の心の底からの本音だった。一華が自分のために心を籠めて贈り物をくれるなど、そのシチュエーションだけで彼は天に昇るほど嬉しいのだ。例えそのプレゼントが蛙1匹だったとしても、忠臣は大切に飼育して繁殖させるに違いない。
けれど、一華としては具体的とまでいかなくとも、何か方向性ぐらいはリクエストしてもらった方が考えやすかったのだ。
「じゃあ、もし欲しい物が出来たら遠慮なく言って下さいね。あ、物じゃ無くてもいいですよ。どこか行きたいとか、何かしたいとか。たまには私の方が忠臣さんのお願いを叶えさせて下さい」
湯気の立つ味噌汁のお椀を両手で持ちながら言った一華の言葉に忠臣は彼女の愛を感じて、朝っぱらからひとり感動で胸を熱くする。
そんな彼の様子にいい加減慣れてきた一華は、お椀の味噌汁を飲み干すと
「忠臣さん、早く食べないと遅刻しちゃいますよ」
と告げて、ごちそうさまと手を合わせるとさっさとキッチンへ片付けに行ってしまったのだった。