不機嫌主任の溺愛宣言
PM8時過ぎ。デパ地下の食品店は皆閉店し、忠臣も売り上げのチェックやデータの整理など閉店作業を済ませれば業務は終わるはずだった。しかし。
彼は頭を抱えたまま、長時間データのひとつも打ち込めないでいる。なぜなら。
――…………………………一華に、セクシーランジェリーを着て欲しい……
昼間、ランジェリー売り場を通りがかった時に見たマネキンの下着が忘れられず、頭を支配していたのだ。
レースをあしらった黒のビスチェにショーツ、それにガーターベルトとタイツを併せたセットが忠臣の網膜に焼きついて離れない。そして、目にした瞬間から彼の脳内にはそれを着用した一華の姿がありありと浮かんできてしまって、もはや仕事どころではないのだった。
ただでさえ天使のような美貌と可愛らしさを持った一華。そんな彼女が黒のセクシーランジェリーを着けた日には、男をあっと言う間に虜にする小悪魔に早変わりするだろう。
そして既に想像だけで骨抜きにされてる男がひとり。
忠臣はあまりに馬鹿馬鹿しい自分の欲求に心底自己嫌悪に陥りながらも、それでも淫靡な魅力溢れる一華の小悪魔姿があきらめられないのであった。
「た……ただいま」
骨抜きの忠臣がようやく仕事を終えて帰ってきた時には、時刻は23時近かった。余計な事ばかり考えてしまったせいで、やたらと徒労を感じる。
「お帰りなさい。遅くまでお疲れ様でした」
しかし、そんな忠臣の心境も露知らず。一華は仕事で遅くなった忠臣に純粋な労いの言葉を掛けるのだった。もちろん、その言葉に忠臣の胸にはまたひとついらん罪悪感が。