不機嫌主任の溺愛宣言
「忠臣さんがスケ……性欲旺盛なのは分かってますから。別に軽蔑したりしませんよ、性的趣向だって人それぞれなんだし。それに、これから長い時間を一緒にいるんだったら尚更、こういう種類の隠し事は良くないと思うんです」
エロについて11歳も年下の彼女に真面目に諭されてしまい、忠臣はほとほと自分が情けなくなってきた。
けれど、彼女の言う事も尤もだと思う。恋人と一緒に暮らし続ける以上、性の問題は切っても切れないものなのだから。下手に隠して余計な誤解を与えてこじれたりしたら、それこそ馬鹿らしい。
忠臣は持っていた箸を置くと、背筋を伸ばし手を膝の上に乗せて真っ直ぐ姿勢を正した。グッと引き結んだ表情を見て、一華は忠臣が覚悟を決めたのだと悟る。そして、彼の覚悟をちゃんと受け止めようと一華もまた背筋を正した。
「一華。俺の誕生日に叶えて欲しい願いがある」
「どうぞ、仰って下さい」
ゴクリと1度つばを飲み込み、忠臣はたいそう緊張した面持ちで口を開いた。
「せ、セクシーランジェリーを着けて欲しい……出来れば、その、黒のガーターベルトなどをだな……」
言葉を紡げば紡ぐほど忠臣の顔は紅潮して行き、ついには両手で覆って顔を背けてしまった。
そして一華は、彼の告白とその恥ずかしがり様にしばらく呆気に取られた後たまらずに笑い出す。
「ふふ……あはは、忠臣さんってば可愛い、あははは」
まさか勇気を振り絞って告白したリクエストを可愛いと笑われるなんて思ってもいなかった忠臣は、驚きのあまり目をしばたいてしまう。
「いいですよ。ガーターベルト、大人っぽいですよね。1度着けてみたいと思ってたんです。それぐらいお安い御用ですよ」
「!!い、いいのか!?」
「全然構いません。あはは、それにしても驚いた。忠臣さんあんまり躊躇するもんだから、よーっぽどいやらしい事を考えてるのかと思っちゃった」