不機嫌主任の溺愛宣言
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けれど。有休の朝を迎えて忠臣は困惑する。
AM9時45分。いつもなら朝礼をしている時間。きっと今日は代わりに右近が行ってくれてる事だろう。そして。
いつもなら朝礼の列に並ぶ一華を見られる時間。
……なぜ俺は休みなんか取ってしまったんだ、と忠臣は馬鹿馬鹿しい後悔をした。一華に対する謎の執着を癒すため休みをとったのに、彼女の姿が今日は見れないのだと思うと気持ちがどういう訳だか沈んでくる。まったくもって手に負えない。
そんな自分に苛立ちを感じ、忠臣は手早く外出する身支度を整えると家から飛び出した。
医者に行って、それから今日はゆっくり映画でも観て過ごそう。ちょうど観たかったミステリーが上映になってるはずだ。夜は久しぶりに近所のバーに行くのもいい。マスターの顔でも見に行くか。
いつもの自分に戻るべく、頭の中から一華を消すべく、忠臣は必死になって今日一日の予定を埋めた。
そして彼は医者に『風邪かもしれませんね』と診断されたにも関わらず、落ち着かない気持ちを誤魔化そうと夜までに煙草を一箱吸いきってしまったのであった。
――結局、全然リラックス出来なかったな。
バーからの帰り道、ストレートのウイスキーを3杯も煽ったにも関わらず一華を頭から追い出すことの出来なかった忠臣は、のろのろとした足取りで家路に向かおうとした。
けれど、腕時計を見て足を止める。まだ時間はPM9時。帰宅して寝るまでには時間がありすぎる。どうせ帰っても家で手に余る想いを悶々とさせるだけだと思い直し、体を駅の方へと向けなおした。
もう一件飲みに行こう。駅前なら遅くまでやってる店も多いだろう。半ばヤケクソな気持ちで、忠臣は次の店を目指した。