不機嫌主任の溺愛宣言

暗闇に舞い散っていく薔薇を見て一華は驚き唖然としたけれど、忠臣はどこか嬉しそうな眼差しで彼女を見ているだけだった。

「もっと教えて欲しい、君のことを。どんな場所が好きで、何色が好みで、どんな時に笑うのか。先に聞くべきだった。すまない、不慣れなもので」

「不慣れ?」

「不慣れどころじゃないな、初心者もいいところだ。今も間違いだらけで君を呆れさせてしまった」

「なんの事ですか?」

不思議そうな顔をして尋ねた一華の質問に、忠臣はもう1度スクェアフレームを手で押し上げると赤らめた顔に真剣な色を乗せて答えた。


「生まれて初めて、恋をした。君にだ、姫崎一華」


――前園忠臣35歳。人生初の恋。そして、告白。

それは自分でも信じられないほど熱い衝動に溢れていて、手に負えないほどの甘く狂おしい想いに満ちていた。


「俺は自分を一生恋なんかしない生き物だと思っていたし、恋愛なんかくだらないとずっと思っていた。けど。……君を知ってその認識が180度変わった。人生が驚くほど楽しくなった。君に恋をしたと云うだけで毎日がもう……幸せな予感しかしない」


涼やかな目元に灯る情熱。その瞳にまっすぐ捕らえられ、一華は自分の鼓動が早まるのを感じる。駆け引きの無い愚直な告白に、彼女の胸は確かにときめいた。けれど。


「こ、困ります。前園主任にそんな事言われたって……私は嫌な予感しかしません」


忘れてはいけない。姫崎一華もまた、恋愛に抵抗のある女だったと云う事を――


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