不機嫌主任の溺愛宣言
どこか嬉しそうな彼女の様子に、忠臣は不機嫌な表情を消してキョトンとしてしまった。
「……何が嬉しいんだ?」
「別に、なんでもないです。それよりほら、熱いうちにピザ食べましょう」
香ばしく焼き上がった生地を口にしながら彼は、美味しそうにピザを頬張る愛らしい一華の姿を見て、ふと考えた。
――もしかして……俺が女に噂される事に、一華は嫉妬していたのか……?
自惚れかも知れない。けれど、よぎってしまった考えはみるみる忠臣の頬を緩ませる。
自分の顔がみっともなくニヤけてしまう事を察した忠臣は、口元を手で覆い咄嗟に俯いた。
「どうしたんですか?忠臣さん」
「いや、ちょっとピザが熱かっただけだ」
女の嫉妬など、わずらわしさしか感じた事がなかったのに。それが一華だというだけで込み上げるこの妙な嬉しさはなんだ?
痛くなるほどムズムズと上がってしまう口角を必死に抑えながら、忠臣は必死で自分の気持ちを静めようと努力した。
目の前の一華は不思議そうな顔をしながら、グラスの水を目の前に差し出してくれている。そんな彼女の頬を両手で包んで『ヤキモチやきだな』と愛でたい衝動を、忠臣は冷えた水を喉に流し込んで、なんとか堪えたのであった。