今でも ずっと
第一章 屈折
また、嫌な夢を見た。

思い出したくないのに…。
忘れたいのに…。


汗ばんだ体を、起こしながら、目覚まし時計を見る。
まだ、6時少し前。
アラームが鳴る前に起きちゃうと、もったいない気がする。
もう一度、布団に潜りこもうとした時、階段を上がってくる足音。

『美紅! 起きてんの?』
「うん。」
『早く、支度しなさいよ!』
「うん。」


うるさい。
頭痛い。
また、朝が来たんだ…。


ゆっくり、洗面所に向かう。
鏡には、いつもの暗い顔。

妹が、先に使ったんだ。鏡に、水が散ってる。

制服に着替えて、下に降りる。
テーブルには、私の大嫌いな、バターたっぷりのトーストと、牛乳が用意されてる。

『あんた、今日は塾でしょ? ちゃんと行きなさいよ! こないだの試験みたいだと、お父さんが言ってた大学は、難しいかもよ。』
「…。」
『千里は、水泳の朝練で大変なのに、勉強も頑張ってるし、あんたは、姉なんだから、しっかりしてよね!』
「…。」

トーストが、なかなか飲み込めない。
牛乳を流し込んで、無理やり飲み込む。

「いってきます。」
『忘れ物ない?』
「…。」
『ちゃんと、塾行きなさいよ!』

聞こえないふりして、玄関を出る。
いつも、妹と比較される。
頭良くて、明るい妹。
普段の私を見てるから、要領がいい妹。
友達も、沢山いる妹。
< 1 / 13 >

この作品をシェア

pagetop