今でも ずっと
『おはよう!』
大声に、びっくりして、自転車こぎながら振り向くと、満面の笑みで、朋実が手を振ってる。

「おはよう。相変わらず、トモは元気いいね。」
『これだけが、とりえだからね。』


朋実とは、高校入学して、同じクラスで、一番最初に仲良くなった。
3年になって、別々のクラスになっても、よく遊んでた。

『夏休みだっていうのに、補習なんて、やってらんないよね。』
「だよね、へこんじゃうよ。」
『終わったら、海、行かない? こんなに晴れると、思わなかったよぉ、あちぃ~。』
「行きたいけど、ごめん。今日、塾なんだぁ…。」
『そっかあ、残念。違う学校の友達が、いい男、何人か連れて来るっていうからさぁ。じゃあ、美紅は、また次のときにね。』
「うん、ごめ~ん。」

ほんとは、塾のことよりも、行きたくない気持ちが強かった。
知らない人と、喋ったりするのは、苦手。
また、暗い自分が、私を止める。
自信のない自分が、出会いを切っていく。
昔から、そうだった。
そんな性格を、見透かされないように、人前では、必要以上に笑って見せることもある。
特に、嘘つく時は…。
『あ、千里ちゃんは、高校受験だよねぇ?』
「うん。」
『美紅と、一緒の塾に行ってんの?』
「…千里は、塾行ってないよ、あたしと違って、頭いいから。」
『そうなんだぁ…、でも、高校最後の夏休みに、補習って、あ~あ、やだよぉ~』


2人で並んで、自転車を走らせる。
しばらくすると、ゆるい上り坂。
坂の上に、緑に囲まれた、洋館風な校舎が見える。
校門を入ると、朋実とは、自転車置き場で別れる。
自分の教室まで、ゆっくり歩く。
ドキドキする。
深呼吸してから、教室に入る。
さっきまで聞こえていた、楽しそうな話声が止まる。
突き刺さる視線。
今日は、補習に来ている人数は、少なかった。
少し、ほっとした。
3年になってから、クラス全員から無視され始めた。


私が、あまり笑わないから、あまり喋らないから…。
どうでもいいけどね…。
どうでもいい。
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