今でも ずっと
今日は、英語の補習。
英語は好きだけど、やる気がわいてこない。

窓の外に、目をやる。
風に揺れる校庭の緑。
蝉がないてる。
男子テニス部が、練習してる。
掛け声が、やたら煩い。
学校にいる男子は、なんだか子供っぽくて、興味がない。
みんな、好きな人の話で盛り上がってても、ほかの次元の話みたいだ。


坦々と授業は、進んでいく。
私は、こっそりとメールする。
早く会いたい、龍一に。
付き合って、3ヶ月だけど、私を大事にしてくれる。
私という存在を、認めてくれる。
もちろん、親には内緒。ばれたら、ただじゃすまない。


“龍一に、会いたいよ。早く会いたい。いますぐ会いたい。”

きっと、仕事中だから、返事はこないだろうけど、気持ちばかりがあせる。



補習は、昼前に終わった。
急いで教室を出て、自転車をとばし、龍一のアパートに向かう。
学校の裏手にある公園をぬけて、商店街を通る。
夕方からの、塾の時間までの少しの時間。
龍一の部屋で、過ごしたかった。

15分くらいで、古ぼけたアパートに着いた。
ここの5階が、龍一の部屋。
合鍵を使って、部屋に入る。
煙草の匂いがする。
流しには、使った食器が、そのままになってる。
ふた間ある部屋は、龍一の趣味の、サーフィンの雑誌が散乱してる。

窓を開けて、風を入れる。
食器を洗って、部屋を片付けて、テレビをつける。
敷きっ放しの布団に、そっと横になる。
龍一の匂いだ。

横になって、ぼうっと、テレビを見る。


ふと思い立って、起き上がり、冷蔵庫を開けてみた。

ビールに、牛乳、オレンジジュース…。
いつもながら、ほとんど、からっぽ。

オレンジジュースを、コップに注いで、窓際で飲みはじめる。

落ち着く時間。
龍一に会えなくても、この部屋に来ると、なんだか嬉しい。


3ヶ月前の、学校の帰り、塾をさぼって、公園のベンチに座ってた私に、龍一が声をかけてきた。
優しい笑顔で…。
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