今でも ずっと
裸足で、砂浜を歩く。
暑くて、痛くて、気持ちいい。
波打ち際にも近付いてみる。


『こういうの、彼氏と来るんじゃない?』

笑いながら、朋実が言った。

「たまには、こういうのも楽しいよ。
あ、今日、龍一と会うんだけど、トモも来る? 花火見れるかも。」

『ううん、いいよ。
お母さん、結構へこんでるから、一緒にいてあげないと…。』

「…うん、そうだね。」


これから、自分の未来がどうなるかなんて、はっきり分からなくて、今は、ただ毎日、同じことの繰り返し。
でも、自分の意志とは別で、ある日突然、思いもよらないことが起こる。
これから、いろんなことが、起こるんだろうなあ。
…生きていくって、面倒くさい。


『ねぇ、美紅、あたし、やってけるかなあ。
お母さんと2人で、幸せになれるかなあ?』

「大丈夫だよぉ!
辛いことがあった分、幸せになれるって!
大丈夫だから…。」


2人で、また泣いた。しばらく、泣き続けた…。



海水浴の人が増えてきたから、帰ることにした。
少しうつむいて、泣きはらした顔で、自転車を押す。
明日から、朋実は補習に行かないって…。
引っ越しの準備があるから。

朋実は、いつもどうりの笑顔で、大きく手を振って帰って行った。

私は、朋実のことを考えながら、龍一の家に向かった。
新学期までには、朋実に会いたいなあ。
夏休みが、終わったら、名字が変わってるのかなあ。
変な感じだよね。
好きになって結婚しても、気持ちは変わってしまうものなのかなあ。うちの親は、夜中に喧嘩してる。
気付いてないふりしてるけどね。
大人になるのが、恐いよ。
辛いことだらけかもしれない。
何のために、生まれてきたんだろう。
意味なんて、ないか…。
ただ、生きてるだけ。
何のために生きるのか、それも、意味なんて、考えないほうが、いいのかもしれない。
考えると、また辛くなる…。
しんどくなる…。
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