表の顔☆裏の顔
一週間。
一週間だぞ!!

通い始めて一週間。
あの女は俺の席に座る事はなかった。
避けられてるのか?
いや。
話してもないのに避けられるはずがない。
指名という手もありるが話してもない相手にはできないという変なプライドが邪魔していた。

今日行っても話せなかったら諦めようかな〜。


「「「いらっしゃいませ」」」


いつもの席へ案内される。
なぜか席は毎回同じ。
まぁいいけど。
ウイスキーの水割りを飲みながら待つ。
本当はロックなんだがな。

「し、失礼します。春です。」

いつまなら顔も見ないし気にも留めないがなぜか気にもなって顔を上げた。

ドキンッ。
まただ。
目が合っただけなのに胸が高鳴る。
なんなんだ。


名前は春か。
可愛い。
俺が名前を呼んだだけなのに叫ばれた。
俺は化け物か。
たしかに今までは誰とも話してはないが、そんなに驚かなくても。

女は苦手。
話したいとも思わない。
春だけは違う。
話したい。
もっと知りたい。
そばにいたい。

いろんな感情が出てくるんだ。

ふと、春のほうへ顔を向けると、


なんだこいつ?
一人でいろんな顔してやがる。

クククッ(笑)

バチッ。
目が合った。
その瞬間自分が笑っている事に気がついた。
慌ててそれを隠す。
いつもの無表情に。

「百面相」

こいつ自分で百面相してるの気がついてないんだ。
可愛い。

「テノールさん!笑わないで下さい!」

はぁ?
今何て言った?
テノールさんって俺の事か?

名前がわからなくて、声がテノールボイスだからテノールさん。
しかも声が素敵って....
ヤバイ。
嬉し過ぎる。

緩みそうになる顔を堪えるのに必死だった。

名前を伝えた。
だか、名前で呼ばれたい。
春の奴苗字で呼ぶ気だ。
それはさせない。
仕事だけで十分だ。
春には名前を呼んでもらいたいんだ。

春はどうしても呼び捨てにはしてくれなかった。
仕方ないか、仕事だもんな。
今は和哉さんでも十分だ。

俺子供みたいだな(笑)
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