表の顔☆裏の顔

早く会いたい。

そればかり考えていた。


お城のような扉の前に立つ。
毎日毎日俺も重症だな(笑)


「「「いらっしゃいませ」」」

いつもの空間にいつもの声が響く。

今日もいつもの席だろう。
黒服の後を歩きながら他のテーブルに目を向ける。

春だ。

一人の男と楽しそうに会話をしている。
その男のテーブルには沢山の紙袋。
なんだあれ?

それにしてもイライラする。
春が他の男と楽しそうにしている姿を見ただけでイライラがとまらない。

席に案内されとりあえず座る。

「春指名できる?」

黒服に伝えると、黒服の驚いた顔。

なんだよ。
指名したら駄目なのか?
それとも俺が話かけたからか?

「申し訳ございません。春さんは只今指名が入っております。少しお待ち下さい。」

一礼して去って行く黒服。


指名?
さっきの男か?
あぁ〜イライラする。


「失礼します。夏実です」

どうでもいい。
春以外とは話したくもない。

「和哉さんとおっしゃるんですね?春から聞きました。」

なんだこいつ。
春と仲いいのか?

「和哉さんが春以外と話したくないのはわかってるので大丈夫です。ただ私無言の空間っていうのは耐えられないので春の事でも話しましょう。」

春の事か。
春の事なら聞いてやるか。

「あぁ」

「!?話せるじゃないですか!まぁ春の事だからですよね?わかりました。ちゃんと聞いて下さいね?」

春の友達なら適当にあしらうわけにもいかないよな。

「春って無自覚なんです」

無自覚?
なんだそれ?

「春って美人でしょ?それを自覚してないんです。」

自分をわかってないって事か。

「そのうえ鈍感なんです。」

鈍感?

「和哉さん春の事好きでしょ?」

えっ?
なんでわかるんだ?

「なんでわかったんだって顔してますよ。昨日の和哉さん、とっても優しい顔してました。あんな顔好きな人にしか出来ないでしょ」

すごいなこいつ。
春の事を好きだってわかったのは今日なのに、こいつは昨日からわかってたのか?
それとも俺がわかりやすい?

「だから忠告です。春は本当に鈍感なんです。相手から思われてるのに気づかないんです。気付いてもらいたかったら直球でいかなくちゃ無駄ですよ。」

あぁ。
そういう意味か。
鈍感ってキャラには見えないがな。
一応礼は言っとこう。

「......ありがとう」

「どういたしまして」

いい子だな。
無愛想にして悪かったかな。


「夏実さん。お願いします」

「はい」

黒服が呼びに来た。

「春が来るみたいなので私は下がりますね」

笑顔で一礼して下がって行った。

やっと春に会える。
そう思うとドキドキが止まらない。
しかし気になるのはさっきの男だ。
思い出すだけでイライラする。



「失礼します」

やっと会えた。
それと同時に

「春、遅い」

本音が出てしまった。

俺の顔を見て一瞬驚いた顔をする春。

もしかしてこいつ俺がいたのを知らなかったのか?


.....気まずい雰囲気。
遅いなんて言わなければよかった。


ん?
春が首元で何かを握っている。
.....ネックレス?
昨日はしてなかった。
もしかしてさっきの男か?

目線をネックレスに送りながら聞いてみる。

はぁ〜。
聞かなければよかった。

さっきの男にもらったと話す春。
その顔はとても嬉しそうだ。

「......ムカツク」

言葉になってしまった。

「俺の前で他の男の事を考えるな」

俺は嫉妬深いのか?
春が他の男の事を考えていると思うだけでイライラする。

シュンとなってしまった春。
困らせてばかりじゃ嫌われてしまうな。
どうすればいいんだ。
いろいろ考えを巡らせていると、春がさっきの男の見送りに呼ばれてしまった。

行ってほしくない。

そう思うと同時に体が動く。

グイッ。

春の腕を引っ張る。
ゆっくりとこちらに顔を向ける。

「.....早く戻ってこい」

行くなとは言えない。
でも早く戻ってほしかった。

「はい!すぐ戻って来るので待ってて下さいね?」

ニコッ。


ドキッ。
あの笑顔は威力が強すぎる。
顔が熱くなる。
きっと俺の顔は真っ赤になっているだろう。
春が帰ってくるまでには冷静にならなくては。


和哉side 終わり
< 19 / 33 >

この作品をシェア

pagetop