表の顔☆裏の顔
沈黙。
和哉さん何も話してくれない。
どうしたんだろ。
「......男」
えっ?
男?
「さっきの男は誰だ?」
さっきの男?
近藤さんの事かな?
お見送りに行った時にすれ違ったもんね。
「さ、さっきの方は、近藤さんって言う方です。たまに来てくださるんですよ」
駄目だ。
さっき告白されたばかりだからかな?
近藤さんの話になるとまともに和哉さんの目を見て話せない。
「それだけ?」
えっ?
「それだけか?それだけなら俺の目を見て話せるだろ」
や、やばい。
完全にバレてる。
ど、どうしよう。
「.....春は.....春は、あの男の事が好きなのか?」
えっ?
私が近藤さんの事を好き?
何で?
たしかに近藤さんは優しいし、いい人。
好きとは.....違う.....
「.....こ、近藤さんはお客様です。それ以上の感情はありません」
そうだ。
私にとっては近藤さんはお客様なんだ。
きちんと断らないと。
「.....そうか。春にとっては客か.....相手はそうは思ってないようだかな」
えっ?
なんでそれを?
和哉さんは何で知っているの?
「.........」
どうしよう。
何も言えない。
「失礼します」
黒服が席へと来た。
「お客様申し訳ございません。閉店の時間となりました」
そっか。
和哉さん来たのが遅い時間だったから。
少ししか一緒にいられなかった。
もう少し一緒にいたかったな。
ギュッ。
ドキンッ。
えっ?
和哉さん?
手、握られてる。
ドキドキする。
でも、どうしたの?
「春、ちょっと付き合え」
えっ?
付き合えって。
「ちょ、ちょっと待って下さい」
「30分でいい。付き合ってくれ」
強引。
でも嫌じゃなかった。
「は、はい!」
ドキドキする。
でもまだ和哉さんと一緒にいられる。
嬉しい。