表の顔☆裏の顔
控え室へ戻ると若い女の子達の黄色い声が響いていた。

「もぉ本当カッコイイ〜!!」
「私もあの席に座りたい!!」

などと誰かの話して持ちきりだった。

誰の事だろ?
春奈はそう思いながらもメイクを直そうと鏡の前に並んでいる椅子へと腰を下ろした。

「春さぁ〜ん!見ました?チョーイケメンが来てるんですよ!」

話しかけて来たのはまだ22歳という葵-アオイ-ちゃん。

「イケメン?そんな人お店の中にいた?
ごめん。全然気づかなかった。」

春奈は一度考え込むと周りがまったく見えなくなる性格。
先程の近藤の事を考えていた為、周りを見る事なく控え室まで辿り着いていたのだ。

「もぉ〜春さんたらぁ!本当に周りに興味ないんだから。あのイケメンは見てるだけで癒やされますよぉ〜」

「そぉ?あんまりイケメンって好きじゃなくて.....ごめんね?」

「イケメン嫌いって春さん!春さん美人なんだからもっといっぱい興味持っていかないともったいないです!」

「葵ちゃんありがとう。でも私美人でもないし、年齢も年齢だし....」

「またそんな事言ってるんですか?もぉ無自覚は困ります!」

よくわからないけど怒られちゃった。
無自覚ってなんだろ?
若さには勝てないや.....


「葵ちゃ〜ん。お客様お願いします」

「はぁ〜い」

「春さんもヘルプお願いしていいですか?」

葵ちゃんが控え室を出た後、黒服さんが呼びに来た。

「今行きまぁ〜す」

ヘルプとはお客様指名の女の子のお手伝い。
春奈はメインで指名されるよりヘルプの仕事が好きだった。

「失礼します。春です」

自己紹介をして席へと座る。
お酒を飲みながらお客様と女の子の話に耳を傾ける。
嬉しそうに女の子の目を見つめながら話すお客様を見るのが春奈は好きだった。
誰かが幸せそうにしていると自分まで幸せな気持ちになれる。
そう思いながら2人の会話に交ぜてもらう。

< 6 / 33 >

この作品をシェア

pagetop