【短】真夏のmystery kiss*+.
「電車は涼しいし、座ってゆっくりしよう」
私を熱中症だと心配してくれているリョウは
空いていた席に私を座らせた。
「う、うん……ごめん」
本当はリョウにドキドキして熱くなってるなんて言えない。
それに、今お互い立ってる方が距離近くなっちゃうし
私だけ座って少し離れてる方が心臓が落ち着く。
気にしてくれてるリョウに小さな嘘をついていることが
なんとなく申し訳なくて
私の前に立っているリョウを見上げると
にこっと笑ったその顔を見て、
今までだったら可愛いな、とか余裕でそんなこと思ってたのに
今は胸が苦しくなる。
私はこんなに苦しいままリョウと一緒にいたくなくて、
やっと本題に入ることにした。
「ねえ、リョウ」
話しかけると、
少し屈んで「ん?」と私に顔を近づける。
「あのさ……」
話しかけたもののなんて聞けばいいのか混乱して、
咄嗟にさっきの紫の言葉を思い出した。
「『職員室に呼ばれた後すぐ帰った?』」
「……ん?」