【短】真夏のmystery kiss*+.
そう思うと、
さっきまでの緊張から解放されたようで
力が抜けた。
「てかナツはなんで俺が何してたか気になったの?」
しっぽでも振ってそうにわくわくしながら聞く彼に、
気が抜けていた私は紫の
『だって万が一彼じゃなかった時に、
他の誰かが夏愛のほっぺにキスしたなんて知ったら、
落ち込むどころじゃない、でしょ?』
なんて言葉はすっかり忘れて、
ずっとそうだと思ってきた
なんでも話せる気の知れた幼馴染相手として、
リョウにさっきあったことを話してしまった。
「……で、紫がリョウだって言うから、
私はありえないと思ったけど、一応聞いてみたんだ。
ありがとね、教えてくれて」
そう言って彼を見ると、
彼の顔からはいつものニコニコした表情が消えていた。
「え……リョウ?」
急に変わった表情にびっくりして
名前を呼ぶと、
はっとしたように、眉を寄せて私を見た。
「ナツ……」「まもなく――」
彼の口が、彼だけの私の呼び方に動いた時、
バイト先の最寄駅に着くというアナウンスが耳に入った。