【短】真夏のmystery kiss*+.
「実はさ、昨日リョウに言われたんだ-―」
紫に伝えながら
昨日のあの場面を思い出してしまって
胸がぎゅっとなる。
『俺、ナツのこと女の子として好きだから』
そんなこと、意識したことなかったし、
するつもりもなかった。
私たちはだって
いつでも家族みたいに一緒にいて、それで……
「私、昨日たくさん考えたんだけど、
リョウとは一緒にいすぎて、
リョウのことを好きっていうこの気持ちが
どんな好きなのか、全然わかんないんだよっ」
紫は「やっぱりか……」なんて、
全部お見通しのようにつぶやいた。
「夏愛、キスされたことと、遼太郎くんのこと。
どっちも考えて眠れなかったんだね」
私はその言葉に無言でうなずく。
2人ともそこで息を吐いた。
『もし昨日の事実を知ったとして、
そして実際大切な人の知らなかった想いを知って、
私は一体どうしたらいいのか』
今はこんなことしか考えられない。
それより先には進まない。
そんな空気を打ち破るように
教室のドアがガラッと開いた。