【短】真夏のmystery kiss*+.



「実はさ、昨日リョウに言われたんだ-―」


紫に伝えながら

昨日のあの場面を思い出してしまって

胸がぎゅっとなる。


『俺、ナツのこと女の子として好きだから』


そんなこと、意識したことなかったし、

するつもりもなかった。

私たちはだって
いつでも家族みたいに一緒にいて、それで……


「私、昨日たくさん考えたんだけど、

リョウとは一緒にいすぎて、

リョウのことを好きっていうこの気持ちが

どんな好きなのか、全然わかんないんだよっ」


紫は「やっぱりか……」なんて、

全部お見通しのようにつぶやいた。


「夏愛、キスされたことと、遼太郎くんのこと。

どっちも考えて眠れなかったんだね」


私はその言葉に無言でうなずく。


2人ともそこで息を吐いた。

『もし昨日の事実を知ったとして、

そして実際大切な人の知らなかった想いを知って、

私は一体どうしたらいいのか』


今はこんなことしか考えられない。

それより先には進まない。


そんな空気を打ち破るように

教室のドアがガラッと開いた。



< 24 / 65 >

この作品をシェア

pagetop