【短】真夏のmystery kiss*+.



名前を呼ばれて振り返ると、

さっきと同じように顔の赤い大崎くん。


私を呼び止めるためか、

ぱっと私の手首をつかんだ。


その瞬間跳ね上がる心臓。


暑さのせいで湿った彼の手のひらは

同じく汗ばんだ私の手首をぴとりと包んだ。


「……大崎くん?」

呼び止められたものの、何も言われず不安になって

彼の名前を呼ぶ。


彼はすうっと息を吸って、吐いて、


「……俺は、君にっ、



…………せ、生徒会に入ってもらいたかった。


高校生になっても、

君と生徒会をやりたかった。

君がいてくれるから、

俺は行事を盛り上げたいと、思えるんだ。


そうだ、実は、俺は……――」


「ナツー!!!?」


大崎くんの言葉の最後は

先に歩いていたリョウが私を呼ぶ声で消されてしまった。


「え、大崎くん、今なんて?」

私は聞きなおすと、

大きく息を吐いて、

「……いや、いい。引き止めて悪かった」

と疲れたように、あどけなく笑った。


私は続きが気になりつつも

彼から解放された手首の熱を感じ取って

なんだか急に恥ずかしくなってきて、

「うん、じゃあね」

と今度こそ歩き出した。


後ろで生徒会室のドアが開く音が聞こえる。



なんだか、

昔大崎くんと2人で作業をしたあの時の

緊張がよみがえったかのように、

心臓が大きく脈打っていた。――





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