狂愛

彼女は満足げな笑顔を見せて、校内へ行くかと思いきや、手を握ったまま、「行こ!!」と行って手を引っ張った。
「軒様、よろしいのですか?」
一人のボディーガードが、彼の耳元で囁いた。彼を乗せてきた車は彼が校内へ入り学校へ送りとどけたことを確認するまでは停車している。
高浜家専属のドライバーも、意味深な表情を浮かべながらこちらの様子をうかがっていた。
彼は足から根がはっているかのように、彼女に手を引っ張られても動けなかった。
「わからない。」
彼の口から漏れた言葉。本音。
けれど、彼女の強く握られた手を振り払うこともできなかった。
気づくと校門前で彼と彼女たちは、注目の的となっていた。
玄関前にいた教師が状いかがいながら近づいて来た。
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