狂愛

彼女は少しひきつり笑いを見せたものの、気まずそうに「ごめんね。」と小さな声で囁き、先に校舎の方へ歩き出した。

小さな彼女の後ろ姿を眺める彼。
彼女はもう自分に話しかけてくることはないだろう。そう感じていた。
後々、彼女が彼との”格の差“を知ることになるのが目に浮かぶ。

それでも、自分に話しかけてくれたことが嬉しくて、心を踊らせた。
ボディーガードと男教師が彼の表情を気にするのをよそに、彼の表情は揺るやかになっていた。

何も言葉を発せず、彼は校舎へ足早に歩き出した。


この彼女との出会いが、この先彼の人生に大きく影響を及ぼすということなど、この時は彼は、考えもしなかっただろう。。
< 12 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop