狂愛

それから担任教員は、教壇の前まで行き、まるで何事もなかったかのように朝礼がたんたんと進められた。
ボディーガードたちは下を向き、沈黙を守っていた。はたから見れば反省してる様にも見えた。
彼が今、何を思っているのか、想像して検討がつかなかった。

「そういば名前、なんていうの?」

朝礼の最中、ヒソヒソ声で彼女が話しかける。
彼は、彼女の顔を見向きもせずに黙っていた。返答する気もあるようには見えなかった。

「あれ?んー、あのさ、門前くん。名前、なんて言うの?」

彼女は彼のその無表情を取ろうと、冗談まじりに聞き直す。

それでも彼は無表情で、黙ったままだった。
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