狂愛

彼女は諦め、口をつぐむ。
彼は、彼女と喋る気などなかった。
言葉は強力であり、人間が意志疎通を図るために最も用いる。
言霊とも言われるくらいだ、個人的な話をして、心を開くような真似はしたくなかった。
彼女は悪い人ではない。
ただ、自分を見て、周りと違った雰囲気を感じ、傍に寄ってきた。
事情を何にも知らないからできたことだ。そんな彼女が、自分に気を遣ってくれたことを快く受け入れ、言葉を発した。それだけのことだ。
彼は授業中も、いつもと変わらず、別の勉強をやりながら、授業内容も把握し、二重勉強をした。
彼女が何度か話しかけてきたが、それからも無視を続けていた。
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