狂愛

それから二ヶ月たった六月中旬。
相変わらず彼女は彼に話しかけ続けていたが、彼は彼女を気にもとめなかった。
彼女はいつも友達に囲まれ、人気者になっていた。
彼はそれを快くは感じていなかった。
しかし、友達の輪が広がり、彼の諸事情なども知ってきているにも関わらず、変わらぬ優しさを持っている彼女に密かに好感をもっていた。

彼は前の日に、酸素がない場所でも長時間人間が耐えていられるカプセルの飲み薬型の薬品を発表し、そこらかしこで話題となっていた。

校舎には大きく垂れ幕がかかっていて、そこには“高浜軒様 祝 新発明”と書かれていた。

彼女は教室に入るやいなや、彼のところへ駆け寄った。
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