狂愛

入学式当日。
彼は高級車で、校門前まで送迎され、二人のボディーガードが見送る中、初めて見る校舎には目もくれず、彼女の姿を探して歩く。

4月の春風に包まれ、満開の桜が広がる校舎。玄関先には、新しい制服に身を包む、彼女の姿があった。

研究に神経を置いてばかりいる彼の、唯一の安らぎの存在。
今という時が永遠に続いてほしい。
彼はそんな気持ちで彼女の方へ真っ直ぐ近づいていった。

「また、同じ学校だな。三年間よろしく。」

彼なりの律儀な言葉遣いで、挨拶をする。
より一層大人っぽく、顔は美形で整い、15歳にして、身長が180センチ近くある彼。スレンダーで長身のモデル体格。勿論、周りにいるほとんどの生徒が彼に視線を向けていたが、彼女もまた、彼を見つめていた。
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