狂愛

彼は思いきり、力強く一瞬片手で抱き寄せると、回りの目を気にしている彼女の気持ちを察して、すぐ離れた。

離す際、耳元で「好きだ。」と誰にも聞こえないように囁いた。

「……え………。」

彼女は、彼の顔を見つめる。

「ごめんな。」

彼は目で笑いかけ、机にかけてある鞄を肩にかけると、彼女の横を少し通り過ぎて、背中を向けたままとまった。

「良い人生、送れよな。」

低いトーンの真剣な声でそう言い残して教室を出る彼。廊下は生徒や後輩達で賑わっていた。

「待って!軒!!」
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