狂愛

「その通りです。」

彼に嘘など通用しない。
男たちは、彼の性格をよく理解していた。

「やっぱりそうか。」

彼はぼやく。
彼女に渡していた記憶除去装置が使用されたという記録が今日入ってきた。記憶除去装置には各八桁の番号が入っており、彼はその番号1つ1つを人に譲渡する際、人と数を暗記していたのだ。彼女に渡した記憶除去装置の番号が使用データに入ってきた瞬間、彼の頭に嫌な予感がはしった。
今まで、使用しなかった装置を約6年経った今になって使う。
それは、彼女が彼の記憶を消したと考えるには奇妙な話であり、他の人に対して使ったと考える方が確率が高かった。
そして、記憶除去装置が使用されたデータが数時間後に消されていたことから、彼の推測は確信へと変わる。
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