狂愛
男たちの感覚は麻痺しており、幻覚でみていることと接触感覚も連動して起こる。現実では気づかないものの、脳で視ている幻覚の中での行動は自由にでき、感覚も脳が支配しているため、感じることができる。男たちに彼女の姿が見えたのも、冷や汗をかいたのも、男が背中に何も背負っていないにとかかわらず、彼女を床に横たわらせたことも、体が軽くなったことも全てセンサーが繰り出す幻。全てが彼の手の内の中の出来事だった訳であった。彼は扉を閉めて彼女を壁にもたれさせ、二倍の速さで酸素を吸引させるよう、小型パネルでデータを送り込む。

「早く答えなきゃ、お前ら全員死ぬぞ。」

そう言って、特殊のレーザーを解除する。
床に寝せていたはずの彼女が、男の前から一瞬にして消え去る。
男たちは幻覚を見ていたことには気づかない。
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