狂愛
余計な小細工は後々厄介になる。
先に事を起こそうとしたのは向こうの方だ。それならば―。
「ボスに繋いでくれ。」
彼は所内移動装置の行き先を地下49階にセットし、コードを打ち込み、正面にある所内移動装置用の地下に急降下する作動装置のところでセットし、暗闇の中を一気に急降下した。
「ボスに…ですか?」
男は不安を隠せず聞き返す。
元ボディーガードの男だけは無表情でうつむいていた。
「あぁ。」
彼の顔にためらいはなかった。
男は小型無線機でボスと通信をとる。
プープーという音が鳴るやいなや、ボスの声が直ぐ様聞こえてきた。
『早くこい。時間が掛かりすぎだ。』
ボスの低く怒りがこもった声。
男たちは氷つく。
男の小型無線機からの通信だ。
男からの連絡だと思って当然だろう。
「親父、久しぶりだな。」
彼は男から小型無線機を受け取り、うっすら笑みを浮かべながら低い口調で喋りだす。