狂愛
『…………。』
「俺に秘密の作戦だった様だけど、俺に知られたくない"何か"を企んでんのか?」
『何の事だ。』
しらを切るつもりなのか、ボスは普段の声のトーンになる。
「何を企んでたって別にいい。後々わかることだ。男たちと真央は俺の所だ。作戦失敗だな。」
『………。』
「この研究施設の責任者は俺だ。」
『随分生意気になったな。クソ餓鬼が。…まぁいい。確かに責任者はお前だ。その男たちをどう使おうと、わたしのしていることに興味を持とうと構わない。』
ボスは一呼吸おく。
気を静めさせているようだった。
『だが、その女だけはこちらに渡してもらおうか。』
冷静沈着な彼がの心が酷く脈うつ瞬間。その女…。神崎真央のことだ。
「なんで真央を?」
少し裏返った声で質問する。
動揺が隠せない。
『理由はない。』
「嘘つくな!真央に何かするつもりか!それとももう何か…」
感情が込み上げ、荒立たしい声をあげる。生まれて始めてのことだった。
六年前の高校の卒業式。
彼女の幸せを願って別れを決めた。
もう二度と彼女に会うことはないと、心に封印して研究に精神を注いできた。だが、彼女のことを忘れることなどできなかった。記憶除去装置を遣えば簡単だ。だけど、彼にはそれがどうしてもできなかった。
『わたしは研究やらにはさっぱりだ。何かをしたのはそちら側の人間。だがお前が生まれる前の話。このことを知り得るのは今やわたしとその女の父親のみ。』
「"このこと"ってなんだ?」