狂愛

彼は考えを巡らせる。
ボスは無言のまま彼に圧力をかける。
だが、彼の熱は一気に冷める。
相手に踊らされては見えるものも見えなくなる。ここは冷静にならなくてはならなかった。

「…どういう事情であれ、真央は渡さない。」

彼はゆっくりと瞳を閉じる。
所内移動装置は地下40階まできていた。真っ暗の中音もなく、ただただ真下へ急降下する。各階の高さが長く、各階を通過するのに、階ごとのパスワードが存在し、所内移動装置の底に付いているセンサーと各階に繋がる扉のセンサー間の認証で各階を通過又は着くことができる。

『そうか。ならこっちも手荒い手段を使わせてもらう。また後で。』

そう言うとボスは通信を切った。
ボスのとる行動は何となくわかった。
あまり頭の良くない人間だ。
彼女の父親をおとりにし、彼女を呼び出すか、または彼女を誘拐しにくるかのどちらかを脳内に浮かべているに違いない。だが、それは無用。
彼女との通信を一切とらせないようにすればいい。
こちら側(地下研究所)に来た時点で、彼女をかくまう場所は未知数。
ボス側に勝ち目はなかった。
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