狂愛
「ねぇ、ねぇ、ねぇ!!」
彼女は少し息を切らせながら、小走りで近寄ってきた。
彼は驚いた表情で彼女の顔を凝視した。
なにしろ、彼に気安く話しかけてくる人は今までいなかったからだ。
「私が住んでるとこの隣の家の人だよね?!」
彼女はにかっと歯を見せて笑顔を見せた。高めのツインテールがよく似合う、明るい女の子。その無邪気さからは都会の雰囲気が一切感じられなかった。
「うん。多分。」
彼はあどけない返事で言葉を返す。
家の回りに住居している人間の顔など覚えている訳はないが、彼の家を間違える人はいないはずだからだ。
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