狂愛
「私はね、先週遠くの方から引っ越して来たんだ!そしたら隣の家がおっきくてびっくりしちゃった!五階のベランダから眺めても見上げちゃうくらいだもんねー。」
彼女は和気あいあいと語りだす。
彼女の声は高めで耳通りの良い声だった。
「うん。」
彼は目を游がせながらうなずく。
ボディーガードの視線がやけに気になった。
小学六年生とはいえ、言葉には気を付けなければならなかった。
誰がどこからどんな形で探りをいれてくるか想像はつかない。
「私は小学六年生の神埼真央!今日からよろしくね!!」
彼女はそういって手を差し出してきた。
彼は戸惑いながらも、手を握った。
彼女の手は温かったが、それ以上にこれまでに抱いたことのない胸の温かさを感じた。
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