あなたが、好きで好きでたまらない。
First Love
1
「ごめんなさい。もう、私とは別れて。」
青く澄みわたった空に吸い込まれる声。
…こうして、屋上で男の人に別れを告げるのは何回目だろう。
「なんで?俺のどこがいけなかった?」
目の前にいる…、えーっと
名前なんだっけ?
たしか、隣のクラスの男の子。
さっきまで彼氏だった人。
「…別に、あなたのどこが悪いとかじゃないの。」
「じゃあ、なんでっ!!」
そんな必死な顔で言われても、別れたい気持ちは変わらない。
「本当にごめんなさい。」
そう言って頭を下げると、やっと諦めてくれたのか、
目の前から去っていく男の子。
バタンッ。
という扉の閉まる音にかぶせるように聞こえた3時限目の始業チャイム。
「今日はサボろっと。」
そう独り言のようにつぶやいて、コンクリートの上に座る。
少し日差しが強い気もするけど、たまに吹く涼しい風が気持ちいい。
次は誰とここで出会い、ここで別れるんだろう。
なんて考えている私は、『姫野 咲』。
桜丘高校1年生。
どこにでもいるごく普通の女の子。…っていうのはおかしいかも。
私が高校に入ってから半年とちょっとしかたってないけど
付き合った人数は…20人くらい?
まぁ、全員、告白されたから付き合っただけなんだけどね。
好きだったかって?『スキ』ってなに?
私は人を好きになるって気持ちがまだわからない。
だから、とりあえず告白されたら付き合ってみる。
もしかしたら、『スキ』って気持ちがわかるかもって思って。
まあ今のところ何もわかってないんだけどね。
で、今回も全然わからなかった。
なんだか今、校内では私に屋上で告白すれば成功率100%なんていう噂が
流れているらしい。