ナツイロ~俺様部長様とわたしの秘密~(2014年夏短編)
「ま、俺が指導したんだし金賞は楽勝だろ」
よっ! 出ました、俺様発言! 日本一!!
「本選出場はちと厳しいが」
「ダメ金、ですね…」
そこ、弱気になるんかい!
俺様貫き通してよっ!
吹奏楽コンクールの世界には、2つの金賞がある。
本選大会への切符がついた金賞と、それがない金賞──ダメ金。
吹奏楽をやっている身としては、やっぱり本選に出てみたい気持ちはあるけどわがまま言ってられない。
なにせここは弱小吹奏楽部なんだから。
「陽香がノーミスで吹けたら、陽香にもご褒美あげるから」
「なっ…!」
甘い声で耳元で囁いた彼。
へにゃん、って力が抜けて、危うくクラを落としそうになった。
「よし、帰るか」
自分でわたしを呼び出しておいて結局少しも練習しないだなんて、本当に自分勝手だなこの人は。
権力ふりかざして善良な平部員を…。
まあ、ここにはまんざらでないわたしがいますけどねっ! ハハッ!
だって好きなんだもん。俺様彼氏様が。