ナツイロ~俺様部長様とわたしの秘密~(2014年夏短編)
◇ ◇ ◇
帰りのバスの中。
部員たちの、鼻をすする音。
赤くはらした目。
隣には、ニヤリと笑う深月先輩(わたしたちの座席が隣同士なのは、彼のむだにある権力による)。
…っていうか、ニヤニヤしすぎでイケメンフェイスを崩れてる?
「みんな、よく頑張ったな。金賞おめでとう!」
「ダメ金だけどねっ!」
役立たずの名ばかり顧問の一言に、誰かがつっこみを入れた。
そう。
我が弱小吹奏楽部は、深月先輩の鬼のような指導もあり見事コンクールで金賞を勝ちとったのだ。
学校の歴史にも残る快挙であろう。
ちなみに、深月先輩もわたしも、課題曲と自由曲を華麗なまでにノーミスで吹き終えた。
つまりは、深月先輩とわたしにはご褒美が待っているってわけで…。
隣の深月先輩のニヤニヤから察すると恐怖というか、なんというか、これからいいことが起こるとは到底思えないっ!
あー、何なんだろー、ご褒美ってー。楽しみだなァ(棒読み)。
あなた、いい加減その緩み切った頬を引き締めないと、権威が薄れちゃうよ?
せっかくのイケメンが台無しだよ?
「じゃあ、部長からも一言もらおうか」
「はい」
顧問が深月先輩に話を振ると、彼は立ち上がりバスの前の方へ行った。