ナツイロ~俺様部長様とわたしの秘密~(2014年夏短編)


「ということで、MVPの玉井にはご褒美があります。玉井を含め、みんなもこれから俺が言うことをよーく聞いておけ!」


「「「はい!」」」


「みんなには隠していたが、俺と玉井は付き合っています」




一気にざわつく車内。


「玉井さん、本当!?」
「陽香、どうやって庵藤先輩を落としたの!?」


圧倒的に女子の割合が高い吹奏楽部。


わたしへの質問が車内を飛び交う。


やだ。耐えられない。と、トイレ行きたいっ!




「玉井。いつからだ? 俺たちが付き合っているのは」


「きょ、去年の11月からデス」


「玉井がみんなに俺たちの交際のことを発表して欲しいとねだってきたので、この場を借りて言わせてもらった。これからは堂々と玉井といちゃつきたいと思うので、よろしく」




俺様部長様は清々しいくらいのドヤ顔で言い終えると、座席──つまり、わたしの隣に戻ってきた。


目が合うと、やっぱり彼はニヤリと笑った。




「お、おやすみなさいっ!」




バスが高校に着くまで、まだまだ時間がある。


隣から感じる視線も、車内の雰囲気も、わたしには耐えられない。


だから、寝るしかない!




「陽香。俺かこのまま寝かせるわけないだろ?」


こんな俺様部長様の一言で騒然とする車内。


知ってます、冗談だって。


…でも、冗談には聞こえない!


本当におやすみなさいっ!


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